Internet Explorer: なぜデザインにおける「引き算」は難しいのか?

2013年6月27日木曜日

なぜデザインにおける「引き算」は難しいのか?

 なぜデザインにおける「引き算」は難しいのか?



シンプルさが 受け てヒットすることもあれば、当初はシンプルだったものが、時間とともに複雑になっていく例もめずらしくない。「シンプルさの秘訣は、ずばり引き算の思考が できるかどうか」だ。


TEXT BY MAT HONAN
TRANSLATION BY WATARU NAKAMURA

WIRED NEWS (ENGLISH)


“Beginning?” By Francisca Ulloa (CC:BY)


シ ンプルさが受けて大ヒット製品が生まれることがある。そして、シンプルな製品はロングセラーにもなりやすい。

サーモ スタット「Nest」 からフィットネストラッカー「Fitbit」、 HDDレコーダー「TiVo」まで、シンプル さがヒットの要因になった製品は多い。人々がNetflixを使うのも、そのシンプルさゆえのことである。また、フィッシャースペースペンやスイスアー ミーナイフ、ロレックス・オイスター・パーペチュアルなどのシンプルなプロダクトは、長い年月にわたって売れ続けている。これらはすべて、シンプルさが生 み出した奇跡ともいうべきだろう。

ただし、当初はシンプルだった電子機器が、時間が経つにつれてどんどん複雑になっ ていく例もめずらしくない。登場時の形をとどめ続ける機械仕掛けの製品が少なくないのとは、対照的だ。

たとえば、初 期の電子レンジは3つのボタン(高・中・低)とダイアルタイマーしかついていなかった。それに対してLG製電子レンジの最新モデルには、33個もボタンが ついている。「このボタンは自動解凍用だろうか、それとも急速解凍用だろうか」、「Less、Moreのボタンには何の意味があるのか」など、たくさんボ タンがあるといろいろと紛らわしい点が生じてくる。またボタンがたくさんあるからといって、必ずしも調理が早くできるわけでもなければ、おいしくできあが るわけでもない。そして操作はややこしくなる。電子製品がどんどんと複雑になっていくのは不思議なものである。

「シ ンプルさの秘訣は、ずばり引き算の思考ができるかどうか」そう話すのは『Design Is a Job』著者のマイク・モンテイロ。「われわれは消費文化のなかで暮らしているが、この世界では多くをこなせることが、すなわち質の高いことと勘違いされ ている。そのため、製品を提供する側は市場で成功をおさめるために、より多くの機能を提供しようとする傾向がある」。仮に、マイクロソフトがOffice の次期バージョンで機能を75%削ると発表したら、どうなるだろうか(ずっと使いやすくはなるだろう)。ただし、マーケティングの観点からはそんなことを するわけにはいかない。

アップルを例にとってみよう。同社はシンプルさに救われた企業のひとつで、「iMac」に始 まり、「OS X」「iTunes」「iPod」「iPhone」「iPad」とヒット商品を連発してきた。しかし、アップルが強大な企業に成長するにつれ、同社の製品 にも複雑さが忍び込んできた。たとえば、iOSの「Newsstand」アプリはその一例。このアプリでは、ユーザーは読みたいものを開く前に、木製の本 棚を模倣した安っぽいデザインのアプリを開かなければならない。

さらにiTunesの場合はもっとひどい。「シンプ ル」をうたう最新版の「iTunes 11」は反応速度こそ軽快になったものの、不要な機能や不可解なインターフェイスが多く残っており、メインの機能──つまり「音楽の再生」が忘れ去られて しまっているようにみえる。それでもアップルには希望が残っている。ミニマル・デザインの主導者であるジョニー・アイヴが、ヒューマン・インターフェイス 部門のトップに就任したからだ。同社製品のデザインがシンプルなものへと回帰するのは、ほぼ間違いないだろう。

同じ くシンプルなインターフェイスで知られるグーグルの場合も状況は同じ。グーグルは簡素な検索ページで、検索(広告)業界のトップに長年君臨してきた。その シンプルさは「Google」という言葉が(「検索する」という意味の)動詞になったほどだ。ただし、Facebookが台頭してくるとともに、グーグル の検索ページはほとんどの人が全く使わないような機能やボタンでゴチャゴチャしてきた。さらに悪いことには、検索結果にも手が加えられるようになった。た とえば「ピザ」と検索すると、ピザに関連する広告や「Zagat」に含まれる飲食店の情報、さらにはピザの言葉が含まれるニュースまで表示されるように なってしまった。

そんなふうにして、アップルやグーグルが複雑さの泥沼に足を突っ込むいっぽうで、ネットラジオのRdioや 検索エンジンのDuckDuckGoのような、シンプルさを売り物にする新しいサーヴィスが勢 いを増しつつある。どちらのサーヴィスもすっきりとしたインターフェイスが人気を博し、熱心なユーザーを獲得している。

ま た、マイクロソフトも最新OSのWindows 8では、シンプルさを全面に打ち出してきている。同OSのインターフェイスや、見苦しいボタンの類を取り去った全画面表示のアプリは、じつにシンプルなも のである……ただし、実際には従来のデスクトップUIも残っていたりする。

シンプルさというのは、実際にはとてもシ ンプルなことだ。市場の要請に抗って、さまざまな機能を省くだけでいい。新たに何かを付け加える代わりに、何かを取り除けばいい。 つまり、ちょっとした勇気の問題なのではないだろうか。



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